システムLSI研究センター(SLRC: System LSI Research Center)は、半導体/集積回路技術を核とし、SoC(System-on-a-Chip)研究の推進、シリコンシーベルトプロジェクトにおける中心的産業クラスタの形成、ならびに、SoC研究開発人材の育成、をミッションとして2001年に設立されました。その後、2011年より第2期がスタートし、社会情報システム基盤研究、クリーンエネルギー技術の研究開発、新規応用分野の開拓、を目標に活動を展開してきました。そして2021年4月、SLRCは第3期をスタートしました。今、我々の生活を支える社会情報基盤は大きな転換期を迎えようとしています。その理由は、以下に示す「2つの新時代」が同時期に到来しようとしていることに起因します。

  1. ポストムーア時代の到来(シーズ的変化):1970年代初頭に世界で初めてコンピュータの頭脳であるマイクロプロセッサが開発されて以来、その発展を支えてきたトランジスタの微細化(いわゆる、半導体の集積度が3年で4倍となるムーアの法則)がついに終焉を迎えつつあります。これは、着実に発展を遂げてきたコンピュータの性能向上が停滞することを意味します。すなわち、トランジスタ集積度の向上を拠り所とする量的アプローチはもはや機能しない時代(いわゆるポストムーア時代)へと突入するのです。
  2. 超デジタル社会時代の到来(ニーズ的変化):今やビッグデータやAI処理に代表される高度かつ複雑なアプリケーションが爆発的に普及しており、持続可能な高度情報化社会を実現するには情報処理能力の持続的向上が必須です。特に、今後のデジタルトランスフォーメーションやデジタル化の加速に伴い、コンピューティング・パワーの拡大は持続可能な情報化社会を実現する上で必要不可欠になっています。

このように、コンピュータ構成法とその社会応用が同時期に大転換を迎える状況は、我々人類にとって経験のないことであり、「SoC(システムLSI)技術」から「コンピューティング技術」へ、「社会情報基盤」から「超デジタル社会基盤」へとそれぞれを発展させ、中長期的視点に立った研究開発の推進が必要です。SLRC第3期では、この挑戦的課題に真正面から取り組むべく、「環境問題も踏まえた将来の情報処理基盤のあるべき姿の探求」と「超デジタル社会のあるべき姿の探求」を2大ミッションと定めました。この目標を達成すべく、新コンピューティング技術/集積回路・半導体技術の確立、超デジタル社会応用への展開、そして、これらを起点とした地域連携型コミュニティの形成、を推進します。

2022年6月1日
センター長 井上 弘士